DeNight

 

事の発端はいつかの酒の席での会話だった

「DELIGHTめくりながら一緒にお酒飲みたいですね」


ぼくたちはかねてより計画していた晩秋のキャンプに組み込んで

夜長のメインイベントにすることにした。




じんわり温もる土鍋がじれったい。

贅沢な時間にするにはきっとこのプロセスが大事。

やた兄が仕込んできてくれたつまみをいただきながら燗にした剣菱をグイっと流し込む。





味噌鍋と剣菱で温まったところでDELIGHT。

レッドウィングのミルヘッドターキーが載ったお気に入りのページを開く。

このミルヘッドターキー、塗装の補修(いわゆるリタッチ)が本当にカッコいい。

まるで怪我を負った生き物のように見える。


元の綺麗な状態に復元するような手の入れ方もいいけど、それとは違った魅力的な手段があるのだと、この写真で僕はプラグとの付き合い方の世界が広がった。

この先、ぶつけて塗装がチップしてしまったときのショックから少し救ってくれたとも言える。偉大。

熱弁しながら、先日リタッチしたスカイのアブサンスタッガーを披露する。


それから同じカラーの同じプラグを持ち寄って比べる。



手のひらで転がしながらあっちからこっちから眺める。

スポットの雰囲気、黒目と白目の大きさ、目の打ち込みの深さ、タイイングアイの位置。

そんなところを比べてハンドメイドプラグであることを再認識する。

比べてどっちがいいとかではなく、違うことで個性を見出せるのがなんだか嬉しいのだ。


プラグを眺めすぎてちょっとぬるくなった徳利をまた傾ける。




それぞれのテントに分かれたあと、まだ寝るにはもったいない気がして文庫本を開いた。

が、じきにうつらうつらして、覚えのある行を繰り返していることに気づきおとなしく眠った。






テントを叩く雨の音で目が覚めた。

予報ではくもりだったはずだが。

カッパを着てまで朝マヅメに出るかどうか。

ぼうっとしてる間にやた兄も起きてきて雨足も少し弱まってきた。


マイブームのアブサンスタッガーでスタート。

カポカポと優しいキックバックアクション、つんのめるような立体的な首振り、そして豪快なロングダート。

それらを織り交ぜ、ブラックバスにとって、いや、自分にとって?魅力的な生物を創り上げていく。


やた兄は珍しくスライヘッド。どうやらダイブの間合いを探っている様子。

プラグと対話するように自分のプラッギングを探る楽しい時間が流れていく。


早々にアブサンスタッガーで1本キャッチしてから(結局出たのは着水後1回目の優しいカポッだった)しばらく、すっかり水面が静かに戻ったころ。


喰った!キタ!ウ!なんだったかはっきりと覚えてないけど

隣に慌ただしさを感じた時にはロッドが船のすぐそこで絞り込まれていた。






やた兄の久々のキャッチが嬉しくてグッと握手した。

僕は船の上で交わすこの握手が大好きだ。

ブラックバスとぼく"たち"の関係図になって、サーフェイスゲームの良いところが濃縮されているように思う。





さて、のんびりと秋のことを書き留めている間にハイシーズン到来。

今年は何度握手できるだろう。



追伸

釣りと酒と言えば、開高健の『魚心あれば』というグッドタイトルな一冊に見逃せないくだりがあった。

「かねがね私は灘の生一本のモト酒を現場でヒシャクから飲みたい、松坂の和田金の本店で松坂牛を食べたい、それと、北海道の山奥でイワナを釣りたい、の三つを考えつづけてきた。」


先の剣菱は灘の酒蔵であり、ここも灘の生一本(きいっぽん)の銘柄を毎年出している。


次のキャンプは日程も場所も未定ャ。

しかし酒は決めたデ、もちろん灘の生一本ャ。シャル・ウイ・ゴー!



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